今私が背もたれにしている壁は元々出窓があった。
我が家は増築工事で新しい部屋ができたり元々ある部屋を拡大したりして、元の面影を残しながら昔より住みやすい家になった。
帰省するたびにアルバムを母は持ってくる。
幼少期に撮られた写真は昔の姿の家を背景に撮られていて、懐かしさに胸を締め付けられる。
特に、ここにあったはずの出窓には思い入れがあった。
出窓には姉妹お揃いのキティちゃんの貯金箱が並べられていた。
小学生になる頃にはおばあちゃんがこっそり入れてくれていた小銭でキティちゃんは重たくなっていた。
小学生になってからはお小遣い制度が導入されて自分たちで貯金をするようになったが、お菓子などを買って戻ってきたお釣りばかりいれていたので10円玉や1円玉ばかりだった。
実はぬいぐるみサイズである程度の大きさだったのだが、お陰様でりんご3個分では収まらない重さになっていて持ち上げる機会が減り、日に焼けて色褪せしていた。
わたしたちは誕生日や母の日父の日などイベントがあるたびにここからお金を出してプレゼントをしていた。
妹と貯金箱からお金を床に広げて数えて、プレゼントの作戦をたてたものだ。
しばらくして同じタイプのドラえもんの貯金箱を弟がで窓に並べるようになり、作戦会議は3人で行うようになっていった。
サンタさんとのやりとりもこの出窓だった。
サンタさんへの手紙はここにおいたし、プレゼントもここにどどいていた。
出窓があった頃は身長が足りず外の景色を見るのは一苦労。
たまに貯金箱を退けて、父が出窓に私たちをのせて外の景色を見せてくれたが母にバレると怒られた。
小学5年生の頃にここはベランダを増築したので出入りが可能なサイズの窓になり、景色は背伸びせずともよく見えるようになった。
あの出窓はもうない。
あの出窓があれば額に入れられた絵のように観ることもできたのだろう。きっとこの景色がもっと特別に見えた。
景色をみるために登る必要もない。
きっとここに肘をついてコーヒーでも飲んだんだろう。
【窓から見える景色】2024/09/26
9/25/2024, 3:55:20 PM