いしか

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踊りませんか?

機嫌の悪い顔をしている私に話しかけてきた、この舞踏会一番人気の伯爵様。

「あの、私に話しかけるのは、辞めたほうが良いと思います」

「どうしてですか?自分が話したいと思ったから、話しかけたのです。貴方の事を、知りたいとおもったから」

伯爵様は余裕だ。
その優しく余裕な立ち振舞が、私は何だが嫌だった。周りには、まだ伯爵様と踊りたい女性が待っている。
正直、私には構わないで欲しい。

「申し訳ありません。少し疲れたので、外の空気を吸ってきます」

私はそういうと、足早に舞踏会の会場から逃げた。何時までも居られる場所ではない。

それに、案の定、私が伯爵様の誘いを断ると、待ちわびていた他の女性達が伯爵様に群がった。

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結局、私は最後まで舞踏会の会場に戻る事はなかった。
夜の風にあたりながら、私は迎えの馬車が来るのを待っている。


その時……………………

「結局、戻られませんでしたね」

声のした方を振り向くと、伯爵様が居た。
何でまた来るのよ。

「どうして私に構うのです?他の方と楽しんでいれば良いのに」

「他の女性と貴方は違う。
私は、貴方だから話しかけているのです」

「辞めてください。他の方に見られたら、嫌味を言われるのは私なのですっ!」

これは本当のこと。伯爵様はとても人気がある。誰もが伯爵様の妻にと思っている。
そんなキラキラした人に、私が話しかけられる理由がない。

「私は、貴方の事が気になるのです。貴方の事が知りたいし、貴方に、触れたいのです」

「は?」

伯爵様は、何を言っているのだろう。
私に触れたい?なぜ?
私よりは素敵な人が伯爵様の周りには沢山居るのに、なぜ私なの?

「あの、伯爵様………。どうして、私なのです。どうして、私の様な女性に触れたいと思うのです」

少しの間が空き、伯爵様が口を開いた。

「…………貴方に、恋い焦がれているから。
私は、貴方の事が好きなのです。
好きだから、触れたいし、知りたいと思う    のです」

伯爵様のいきなりの告白……。
驚きの方が多かった。けれど、私は今までに感じた事のない感情になったのは事実。
あー、私、こんな不意打ちで ほだされてしまったの?

「あの。伯爵様………。じょ、女性から誘うのは、いけないのかもしれないのですが……、」

「はい………」

私と伯爵様を明るく晴れた夜空と月が照らす

「私と、踊って頂けますか?」

私の今の精一杯の強がり。でも、伯爵様は、何だがとても嬉しそな顔をした。

「………っもちろん。喜んで」

私は恋愛に限っては、色々な事に疎い。
けれど、この方となら、と初めて思った。
単純でもいい。
悲しくてもいい。

私は今、この人と恋をしたい。
そう、思ったのだ。

10/4/2023, 12:01:18 PM