お題:ずっと隣で
君は、しつこい程に私に話しかけてきた。私が考えを少しでも話そうとすれば、隣に座ってきて、眼球の中にまるで宝石の輝きを持っているかのような眼光で、私の事をまじまじとみて、楽しそうに微笑んでいる。私が言葉を考えている時もずっと隣で、母のように優しく、明るく微笑んでいた。
ある日、彼女と軽く会うことになった。特に用はないが気分転換みたいなものだ。久し振りに合う彼女はどんなものだろうか、以前メールをした時は何処と無く違和感があり、気になってしまったが私の思い違いだろうか、等考えていれば待ち合わせ場所に着いていた。あいにく私はどれだけ親しい人でもあっても顔を忘れてしまう方なのだ。皆同じ様な顔をしていて実に詰まらないものである。名前が呼ばれた、振り向くと彼女がいた。しかし、何処と無く違う。人間には第六感もある人もいると言う噂を耳にするが、この時はその第六感が冴えたのか。何か、違った。彼女には白髪が所々生えていた。ストレスだろうか、等と考えいるが声をかけなければならない。様子を伺うように彼女の名前を呼び、私は余り人と目を合わせることが苦手だがこの時ばかりは、自分の意思で合わせないといけないと思った。しかし、一向に目が合わない。いや、合わないと言うよりは、彼女が空虚を見つめている感覚だ。これは、駄目だ。怒りと情けなさ、が私の中に蠢いていた。その日は彼女を早く帰らせた。むやみやたらと、話をするのは良くないのだろうか、そんなことを思い、その日から一年私からは1つも連絡しなかった。
久し振りに連絡をとり公園で出会わせた。そこら辺のベンチに座れば、ポツポツと話し始めた。大変な事が起こっていたみたいだ。大変だったね、等軽々しく言えず、そうなんだ、と詰まらない返事で、ずっと隣で、近くに咲いているすみれの花を眺めがら只、頷いていた。
3/14/2024, 7:20:33 AM