わをん

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『子供のままで』

「姉ちゃん、一緒に食べよ」
春の陽気を通り越して夏かと思うぐらいに暑い日。おつかいから帰ってきた弟がエコバッグからアイスを取り出して笑みを浮かべる。年の離れた弟はおつかいのごほうびを2つに割って食べられるアイスにしたらしく、その半分を私にくれるのだという。
「ありがと。じゃあお礼に先っちょあげる」
「いいの!?やったぁ!」
2つに割ったアイスの取っ手がついたシール部分、すなわち先っちょに詰まったアイスはなんだかおいしい気がするという感覚は今も昔も同じものなのだなともらった分をすすり上げ、もう一つの先っちょに手を付けた弟を微笑ましく思いながら見つめる。
同級生の男子たちは声変わりが始まったり、男子だけでつるんだりと少しずつ変わってきている。弟もいつかはそうなってしまうのだろうか。
手元のアイスを揉みながら尋ねる。
「アイス食べたら姉ちゃんと何して遊ぶ?」
「スマブラ!」
「スマブラでいいの?姉ちゃんまた勝っちゃうよ?」
「今日は勝つもん!」
アイスの冷たさを握り変えつつ吸い上げ、元気いっぱいに声を上げる弟はかわいい。いつかは変わってしまうなら、子供のままの今のうちにこのかわいさを堪能しておかないとという気持ちになる。半分のアイスを平らげた弟はいそいそとゲーム機の準備を始めた。

5/13/2024, 5:36:19 AM