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最近、気になっている人がいる。
名前は海江さん。

いろんな部署で噂になるほど仕事ができて、みんなに慕われていて、背が高くて、美人で…
どうにかお近づきになりたいと、ずっと思っていた。

そんな自分が、仕事でなんとか海江さんと知り合うことができ、そこから努力を重ねて親睦を深めたある日。
自分は彼女を海に誘おうと決めた。

「海へ行きませんか、海江さん」

昼休み、一人でいたタイミングで思いきって話しかけてみる。

「いや、えっとあの、海江さん、海似合いそうだからな~ってなんとなく思って、その、だから、」
面食らったような顔の彼女に、必死になって説明する。わずかな下心は隠して。

すると、彼女は突然ぷっと吹き出した。

「だじゃれですか?」

今度は自分が驚く番だった。今のやり取りを思い返して、はっと気付く。

「え、っと、そんなつもりはなくて!ただ純粋に誘っただけで…」

弁解しようとした自分に、彼女はさらにクスクス笑う。そして言った。

「いいですよ。行きましょう、海」

「…えっ」
「二人だけですか?」
「あ、その、つもりです」
「分かりました。日にちは?」
「まだ、決めてません…」
「では今日の業務終わりに話し合いましょう。あと時間と、場所と、いろいろ決めないといけませんね」
てきぱきと話を終え、「そろそろ時間ですね」と言いつつ部屋の扉を開けた…と思ったらふいと振り返って、微笑みながら

「楽しみにしていますね」

と言い残して去っていった。


…海江さん、すんなり承諾してくれたな。
二人きりなんて、デートみたいなものなのに。
しかも、あんな笑顔まで向けられて。
あちらにそんな気はないと分かっていても、期待せずにはいられない。

浮かれた自分は早速、スケジュール調整を始めた。


【海へ】

8/23/2024, 1:16:05 PM