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「この曲おすすめ!1番好きな曲なの」
「少女レイ?」
「そう、聞いてみて」

ずっと好きだった人の隣にいた
友達として隣にいた
最初はただのクラスメイトで、グループワークをきっかけに話すようになって、一緒に勉強して、帰り道も途中まで笑いあって、たまに一緒に遊びに行った
いつの間にか隣で笑ってくれる彼のことが好きになった

「俺さ、好きな子がいるんだよね」
「え!?意外笑恋とかしなさそうなのに」
「そりゃするよ笑今度2人で遊びに行けることになったから、告白しようと思ってるんだけどどこがいいと思う?」
「ん〜、都内でもここの水族館とかすごく綺麗で、人も少なくていいと思う。1時間半とかで回れるから帰りここの展望台に言って告白するとかは?カフェも併設されてて、夜はほとんど人いないしゆっくり夜景見ながら話せるよ笑」
ちゃんと笑えているだろうか、ちゃんと彼の友達を演じられてるだろうか
「なんでそんなスラスラ出てくるの流石笑」
「そりゃあ女の子喜ばせるためにはね〜笑なんでも聞いてよ、女子の好きな事とか喜んでくれることは何となくわかるから!」
「頼りにしてるわ!」

好きな人のためになるならなんでもいいと思った
彼はあまり自分の感情を表には出さない人だから言ってくれたことが嬉しい
例え1番になれなくても隣じゃなくてもいれるだけでいい
そう思ってたのにどんどん心が黒くなって行くのが嫌で振り払いたくて跨線橋を駆け下りた。
告白、成功しなければいいのにとか思う自分が憎かった

「上手くいったよ、付き合えたよ。」
「おめでとう〜!!ぇぇえほんとに良かったね」
上手く、笑えてるだろうか
心から祝えているように見えてるだろうか
「ほんとに彼女いい人でさ、優しくて笑顔が可愛いんだよ。たまに喧嘩しちゃうけど」
「喧嘩するほど仲がいいって言うしいい事だよ笑女の子が不機嫌な時はね、目つぶって口開けて?っていって好きなお菓子を1口入れるの。ほんの少しかもしれないけど笑ってくれるかも。あとは寒い日続くしカイロと頭痛薬はカバンに入れておくこと!ほら!!」
自分の気持ちを押し込むようにカイロと薬を彼の鞄の中に押し込んだ。
自分用に今朝買ったこの子達はきっと彼女ちゃんのために使われるんだろうな
「じゃあね!」
いつもはまたねって言ってくれるのにじゃあねだったのは無意識じゃないだろう、そりゃそうだ、彼女と同性の私とはもう2人で会えない。初めて自分の性別を恨んだ。
これから肩を並べて歩くのは、私じゃないことを想像すると苦しくて仕方がなかった。嫌だった。好きな人の幸せを1番に願えなきゃ行けないのに願えないのが嫌だった。
いつもは跨線橋を渡って帰るけど、今日は少しでも長く彼と話していたくて、踏切を選んだ。
誰よりも彼のことが好きだった自信があった。
ただ、自分の気持ちを伝える勇気は誰よりもなかった
隣を歩けなくなってしまうことが嫌だった。
たとえ友達だとしても彼の隣を並んで歩いて、勉強した。する時間はとっても幸せだったから幸せの中にずっと居たいと思った。

「この人同性愛者だったんだって。でも高校生の時に好きな人を亡くして、最後自殺したの。青酸カリの着いたリンゴを食べて死んだんだけど、白雪姫を真似したんじゃないのかって」
「なにそれ…素敵な人だね、やっぱり同棲愛って難しいよね〜、人を好きになることは簡単だけどその人と両思いになることも凄いことで、さらに付き合うなんて確率的に低いと思うの。色んな弊害あるし、そこから結婚とかもうとんでもないよね、普通の恋愛でもこんなに難しいのに同性愛とかもう枠組み超えてる」
「いい人いないの?」
目の前にいるよとでかかった言葉を飲みこんで、「居ないな〜笑なかなかね、同性全員が恋愛対象な訳じゃないし」と言った。確かに私は両性愛者だが、今好きなのは異性だよともいえなかった。

「君に好きな人出来たら狙っちゃおうかな〜」
「いや俺かっこいいし絶対俺が勝つな」
「いうね笑笑女の子の喜ぶ方法とか知らなそう」
「それはこれから身につけるし、教えてよ。クラスの女子たちよくイケメンって君のこと言ってるじゃん」
「そりゃ私イケメンなんで?笑友達のお母さんに結婚してうちに来て貰えって言って貰えるくらいにはイケメン度高いから勝つの難しいよ〜??」
難なく勝ちやがって、むかつく。
家に帰ってから図書室で話した偉人さんが気になって調べると、好きな人が忘れられない人生を辿ったという説があるとでてきた。
死ぬ時も彼のことを思いながら死んだのだろうか。
すごく素敵だと思った。天国で会えてるといいな。


頭の中に踏切の音が鳴り響く。
音には合わないけれど右左と規則正しく移ろう赤色が目に入る。
空を見上げると、綺麗な藍色をしていた。
けたたましく鳴り響く警笛の音と共に私の記憶はここで終わった。

私も来世は、好きな人と結ばれて幸せになれますように。

5/30/2023, 2:16:07 PM