鴫沢(しぎさわ)

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 いやな時期になってきた。この時期になるとやりきれないおもいにおそわれる。むかしはこうではなかった。いつからこの時期を厭悪するようになったかは、わたしに明確にわかっている。それは大学受験が蹉跌してからである。
 むかしからわたしはとりえのないニンゲンであった。あらゆることに劣等感をかんじ、いつもフマンをくすぶらせていた。
 しかし、そのときはまだキボウがとざされているわけではなかった。わたしのジンセイにもまだ曙光がさしこむ余地があった。その曙光とは大学受験である。
 大学受験にせいこうし、だれもがみとめる一流の大学に入学すれば、わたしのジンセイの蒔き直しがかなうとおもった。とりえのないわたしにもヒトにほこれる強みをもつことができる、そうかんがえることはわたしのはげましになった。
 わたしは一流の大学を志望校にさだめ、べんきょうにはげんだ。元来べんきょうがとくいなわけではなかったが、ジンセイのゆいいつの曙光をのがさないようにするべく、孜孜としてべんきょうした。
 しかし、非望をいだいたわたしを、ゲンジツは大学受験の蹉跌というかたちで、てきめんにうちのめした。第一志望にさだめた大学は不合格で、あまつさえ第二志望の大学も不合格であった。
 わたしのキボウはついえた。もはやわたしのジンセイに曙光がさしこむ余地などなくなった。これからは刑余者のようにでぐちなしのどんづまりのジンセイをあゆまねばならぬだろう。

 この蹉跌のきおくがわたしをさいなみ、わたしはこの時期を厭悪するにいたったのである。まだキボウのついえていない高校生をみるとねたましくおもう。そして、受験にせいこうし、あかるいミライへととびたつ高校生をみるとひきさかれんばかりになり、じぶんのいかに無力かをしる。
 もしこれをよんでいる方に高校生の方がいられたら(わたしの暗鬱な文章などよんでいるものがいるのかうたがわしいが)、わたしの覆轍をふまぬようちゅういしておきたい。おわってしまったニンゲンから。

1/14/2024, 12:46:15 PM