よらもあ

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昔、聞かせてもらった話がある。

思いがけず出会ったばかりの男女が、はじめての冒険をする物語。
洞窟に迷い込んだ2人はその暗い道幅をおそるおそる進んでいく。
暗い世界は恐怖を煽り立てるのに、すぐ隣にある熱があまりに熱くて心臓が躍っているようだったという。
道すら無くなり、なんとか見つけ出したボートに乗り込んで波に揺られながら漕ぎ出した時の高揚感。
大きな波に揺られた時にお互いを抱き止めながら進めば、遠く先にキラキラと明かりが見えてきた。
そう、ようやく洞窟を抜けたのだ。その先に広がるのは大きな月と満天の星空だった。
2人の男女は抱き合って月に感謝をし、その冒険を通して相手がどれだけ大切なのかを実感したのだという。
そしてその気持ちは、いくら時間がたっても褪せることはなかった。

なんていう祖父と祖母の初デートの話が好きで、何度もせがんで聞かせて貰った。
もっぱら両者とも恥ずかしがってしまって、その時の御付きの人がどれだけヒヤヒヤしたかという話がメインになってしまっていたが。
これからも、ずっと、ずっとずっと聞き続けていたかったが、今はもう聞くことは叶わない。
月を見上げて、満天の星空を眺めて、その中に若かりし祖父と祖母の姿を見る。

おかげさまではじめての洞窟デートに憧れすぎてしまい、自分自身はデートどころではなくなってしまった問題の解決方法も聞いておけば良かったな。





“これからも、ずっと”

4/8/2024, 4:08:14 PM