『雪の静寂』
目を開けると、そこには大きな硝子の壁があった。水族館にあるような、壁一面の硝子。その向こうでは雪が降っていた。世界の彩度が低くなっていて、とても静か。この世に私しかないような気もしてくる。
体が痛い。見れば床の上で寝ていたようだ。体を起こし、胡座で伸びをする。背骨や腕の骨がぽきぽきと疲れを吐き出す。私はため息を吐いて部屋を見渡す。ここはどこだろうか。全く知らない部屋だ。外の景色は、どこか見覚えのある、五メートル四方程度の庭。雪が積もって緑は眠っているようだ。部屋には何もなく、もし出ることができなければ死んでしまうだろう。やりたいこともない人生だったから、平凡に死ぬよりはいくらか面白い。だからそこまで絶望はない。
そうだな、もう一度寝てしまおう。どうせなにもすることがないのだ。そうだ、雪を眺めよう。しんしんと降り積もる雪を私は歓迎しよう。そして共に眠ろう。
静かな世界におやすみ、と囁いた。それがこの世界で初めての音だった。
12/17/2025, 3:54:40 PM