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物憂げな空(オリジナル)(異世界ファンタジー)

「お前はこれが狙いだったんだろ」
ライの目の前で男が古い剣を鞘ごと空に突き立てた。
厚い雲が空を覆い、今にも雨が降りだしそうだ。
男はいつもの人当たりの良い外面を捨て、邪悪に笑った。
「お生憎さまだったなぁ!」
古代の魔力が宿ったその剣を、鞘からスルリと抜いて、男はライに迫った。
「死ね!」
ひ弱な外見をしたライには避けられないだろうと高を括っていたのだが、剣がガチンと弾かれた。
「な、なんだと!?」
ライは動いていなかったが、何やら光るものが結界のように剣を受け止めていた。
男はライが魔法使いらしいと知っていた。
光るものを操っている様子から光属性の魔法使いだとふんで、夜間か曇天を選んだのであったが。
「光がなくても使えるのか?!」
「…あまり魔法にお詳しくないようですね」
ライはため息をついた。
「確かに私の目的はその剣です。悪さをしないようならそっとしておこうと思ったのですが、精神的にあまり良くない影響を与えているようですね」
「何だと?!」
「回収します」
ライが手のひらを広げ、男に向けた。
男は剣を再度振りかぶる。
魔剣から闇が放たれ、ライに襲いかかった。
「できるもんならなぁ!!!」
男は魔剣の闇に飲み込まれ、目を爛々と輝かせた。
ゴウゴウと風がうなり、天空の雲が渦を巻く。
空がより一層黒くなり、ゴロゴロと雷鳴が轟いた。
「わはははは!!」
魔剣の強力な力を確信して、男は喜びに狂った笑い声をあげた。
カッ!!
空が一際明るく輝き、空気をつんざく一撃が空を割った。
ビシャーン!!
ドーン!!
雷の一撃。
地響きが通り過ぎた後、ぷすぷすと煙をあげていたのは、魔剣を持った男の方だった。
「な、ん、で…」
男は地に倒れ伏した。
ライは片足を引きずって彼に近寄り、無事古代の魔剣を回収すると、
「すみません。私、得意魔法、水と雷なんです」
と、ニコリと笑った。
雲に渦を作ったのも、雷を呼んだのもライであった。
男はがくりと首を落とし、気を失ったのであった。

2/25/2026, 11:58:47 AM