ー邪魔者ー(二人だけの秘密)
屋上で一人たそがれながら、
自販機で買った無糖のコーヒーを格好付けて飲む。
これこそ休み時間の有効な使い方だろう。
「チッ」
横から突然舌打ちが聞こえたら、自分に向けられたものではないかと気になりはしないか。
僕はまさにその瞬間。
ドキリとして顔を向けた。
そこにいたのは絶世の美女…。
気の強そうなその人は、いつの間にか僕の隣に来ていたようだ。
「あー!ムカつく!!」
びっくりする程大きな声でひとり言をいう。
怖い。
自然に場所を変えようとするとその人は、
「どこ行くの」
と言った。
僕に向けた言葉か、これまたびっくりするひとり言か。
どちらかと言えば前者だろう。
しかし僕に勇気は無いので、別の人間に話しかけた可能性を考慮し、再び歩き出す。
「ちょっと」
手が、僕の肩を掴んだ。
「え。…僕ですか?」
「そう。話聞いてよ。どうせ暇でしょ」
「暇っていうか…」
「いつも一人なの知ってるんだからね」
「…なんで僕」
「だって、他に誰もいないし」
本当だ。
屋上には僕たち以外に人間が見えなかった。
「……」
「あれ見て」
彼女が指すところには、一組のカップル。
腕を組みながら歩いている。
「…カップル?」
「うん。まぁそうとも言える」
この人は、カップルを見て嫉妬する、恋愛がしたい人?
「あの人ね、私の彼氏」
「…浮気ってことですか?」
「そうそう。浮気大好きな人なの」
「…どうして付き合ってるんですか?」
「格好いいから」
「あなたが浮気相手の可能性もある」
「あなたって呼び方気持ち悪い。凛(りん)って呼んで」
「…はい」
「私は本命。それは本当」
「どうして?」
「中学からこの4年間付き合ってるから」
「え?」
「幼馴染みで、成り行きで、みたいな?」
「凄いですね」
「あっちも私のことステータスだと思ってるみたいだし、もう恋心なんてお互い燃え尽きてるから、見栄を張るために付き合ってるだけだけど」
「…それで、なんの話ですか?」
「あぁ。愚痴?言わせてよ。一緒にいるとこ見たら、あいつ嫉妬するかもだし」
「嫉妬させたいんですか?もう好きじゃないとか言いながら?」
「それは……なんだって良いでしょ!」
「それに僕じゃ嫉妬なんてしなさそうですけど」
「大丈夫でしょ!」
「…うーん。僕は確かに暇なので、昼休み屋上でならいいですけど」
「ありがとう。もう今日は良いかな。明日からお願いね!」
「はい」
「あっ!私があいつのこと好きなの誰にも言わないでね」
「言いませんよ。相手だって」
話し終わらない内に、暖かい何かが頬に触れた。
音が、消える。
「お願いね」
耳元でそう聞こえたかと思うと、彼女は小走りで去って行く。
感触が残っている気がして、恐る恐る頬を触りながら、
僕は呆然として屋上の扉を見つめていた。
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おやすみなさい。19:49
5/4/2026, 10:49:59 AM