謎い物語の語り手

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懐かしく思うこと


毎年春休みに、祖父母の家に何泊かしていた。

祖母とはよく話すんだが、祖父は寡黙な人だった。

ある日、俺は思い立って祖父を散歩に誘った。

祖父は頷いてくれたので、近くを歩いていた。

登りはしなかったが、山の近くまで来た。

祖父はなんだか懐かしげに山を見ていた。

「じいちゃんは懐かしく思うことってないの?」

「ないことはないな。だがこの話をしてもなぁ」

珍しく声を出した祖父に驚き、その話を聞いてみた。

「昔な、ここで妖怪と遊んだことがあった。」

「へぇ」

「また遊ぼうと約束したんだがなぁ」

寂しそうに言う祖父になんだか笑えてしまった。

「じいちゃん見えてなかったのか。家に座敷わらしがいるんだよ。ちゃんと近くにいるから大丈夫」

霊感がある俺が言うんだ。見えないけど感じるよ。

「それなら安心だ」と祖父は笑った。

10/31/2024, 9:29:27 AM