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 起こったことより、起こりそうなことが怖い。
 ホラー映画やスリラー映画でも何かが始まりそうな、出てきそうな雰囲気のとき最も怖く感じる。
 登場人物がそこ行っちゃダメ、そこ開けちゃダメということをわざわざして、ついに“それ”が現れると緊張感が解けて怖さ半減、場合によってはこんなもんかと拍子抜けする。
 
 髪を洗っている最中に、ふと鏡に“何か”が映っていたら…と想像して目を開けるのが怖くなった経験がある人は少なからずいると思う。
 一瞬の想像に過ぎないのに、“何か”が本当にそこにいるかのような恐怖感にとらわれてしまう。
 見えているものより、見えていないもののほうが想像は膨らみやすい。“何か”が背後にいたり、頭上にいたり足下から出てきたり……。

 自分は怖がりだという自覚がある。
 心霊的なものよりは人間や失敗のほうが怖い。
 起こってもいないことが怖くて、行動しなかったことで機会を逃したことも多くある。
 反対に危機を回避できたこともあるので怖がりも悪いことばかりではないのだが、やらなかった後悔のほうが記憶に残りやすい。


『怖がり』

3/17/2024, 6:18:22 AM