お題:お祭り
浴衣着て、りんご飴にカステラに、それっぽいやつらが大量発生。鼻緒が切れて背負ってもらう、なんて、ありもしない乙女な夢を抱きつつ、無闇矢鱈にはしゃぎ回り。花火を見るため穴場とやらを探し出し、たかが炎に歓声をあげ。
「あ〜〜〜〜あぁ、くっだらねえ」
くだらない。本当に。
「アンタが一番はしゃいでるよ」
浴衣着て、りんご飴にカステラに、下駄履いて、変な調子であっち行きたいこっち行きたい歩き回って、穴場とやらで花火を見てる。
「アンタが一番楽しそうだよ」
花火に照らされた君の笑み。
認めたくないのだ。くだらない。認めてしまってはいけないのだ。くだらない。
「ぶはっ! なんて顔してるわけ! この意地っ張りめ〜!」
「うっわ! やめろ、恥ずかしい! 引っ張るな」
「あはは! 素直に楽しもうよ。浴衣すっごく似合ってるんだからさ」
ああ! 恥ずかしい!
君が素敵だと認めるわけにはいかないのに!
■
お祭りは帰り道を辿っているときが一番いい。
なんで?
まるで夢と現実の境目を彷徨っている気分になれるからさ。
ふうん。
(キラキラ、遠くで提灯が光っていて、でもここは街頭の明かりがジジジと降り注いでいて、遠くから音楽が聞こえて来るのに、ここだけコンクリートを踏む靴の音だけで。たしかに、このままどこかへ彷徨ってしまいそうな気がして……怖くなって腕にしがみついた)
お祭りの帰り際は寂しくなるよね。この寂しさも僕は好きなんだ。
(そう言って心地よさそうに笑った。この人は、寂しいが、好きなのかな)
……寂しいのはやっぱり寂しいよ。こわくないの?
怖いかい? 寂しい気持ちを寂しいまま感じられるなんて、なんと幸せなことだろうと思うんだよ。
……わかんない。大きくなったらわかる?
(不思議な感覚がした。宙に浮くような。怖くて、またぎゅっと腕にしがみついた)
どうだろうね。ふふ、お家帰ろっか。
うん! おうち帰る。
(優しく頭を撫でてもらって、僕はようやく息を吐いた。どんどんお祭りの賑やかさから遠ざかっていって寂しい。けど、お家に帰れると思うと嬉しくなった。ほんのちょっぴり、寂しいの良さをしれた気がする)
7/28/2023, 2:02:47 PM