ぼぼ

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 木枯らしが、木の枝から紅く色付いた葉をさらって行く。
 鋭く、冷たく、吹きすさぶ風は、まるで近づくものを全て拒絶するかのよう。

 自然の理は、人の心を動かし、またその心を露わにする。
 たとえば、この厳しい風のように、突然誰かにら攻撃されることもあれば、己が他人を拒絶することもある。

 自然はいつだって理不尽に私たちに試練を与える。
 けれど、私たちは自然を愛している。この冬の寒さに震え耐えながらも、暖かい家、暖かい衣、温かい食事を堪能し、季節をその身で感じることを慈しむ。そして春を待ち侘びる。

 それなのに、誰もこの理不尽な世界を愛しはしない。
 時に怒り、憎み、恨み、そして、呪う。
 そのような暗い言葉を口にする者はたちまち気味悪がられ、異端とされ、排除されるだろう。目の前にそんな人間が現れれば、誰だって目を背ける。己に害を成すものから遠ざかるのは、人間の本能なのだから。

 けれど、それは他人事では無い。
 誰もが呪いを吐きながら、呪いを吐くものを嫌煙している。そのようなことはないと綺麗事を吐く人間は嘘つきだ。もし本当にいるのだとしたら、裸で木枯らしに吹かれているようなもの。すぐに淘汰されるだろう。

 そして人は他人がそうであることを望んでいる。
 己が呪いを吐くことなく、呪いを嫌煙しない人間であると信じている。

 人は寒さを呪い、拒絶する。
 けれど木枯らしに情緒を感じるだろう。

 人は人を呪い、拒絶する。
 そして情緒を殺すだろう。
 誰にも呪われず、誰も呪わないように、己の心を殺すだろう。

 ああ、なんて、寂しいこと。

 それが美しくもあり、恐ろしくもあり、

 そして、悲しいこと。

 
 
 

 

 
 
 
 

 
 


 

1/18/2023, 3:37:08 AM