開花宣言が発表されてから季節に似合わぬ突風に大雨が続き、変化が早かった。満開の桜はあっという間に桃色から緑へ。早き替えを見せられているようで自然にいじわるをされている気分。
「ゆっくりお花見したかったなぁ」
連れて行ってもらったが、ひらひら舞落ちる花びらをお団子を食べながらじっくり眺めてみたかった。あまりに早い葉桜の登場に肩を落としていると
「じゃあ今回のおやつは君にぴったりだね」
彼がトレーから私の目の前に和菓子と湯飲みを置く。ねりきりと口の広く開いたガラスの湯飲みはどちらも
「桜…?」
ねりきりは桜の形、湯飲みのお茶には桜の花が咲いていた。彼からの出張土産だそうで大人気で買うのが大変だったそうな。半透明の花びらがゆらゆら揺れる。意外と何でもお茶になるらしい。
「満開って訳じゃないけどゆっくりお花見はできるだろ?」
彼の言葉で全体をばかりに気を取られてひとつひとつを疎かにしていたんじゃないかと手もとの湯飲みを覗いた。湯飲みに閉じ込められた私だけの桜をたっぷり目で満喫した後
くいっとあおぐと口から鼻腔へほわりと広がるお茶と微かな桜の香りが体を解す。見映えの良い透明な器に花開いた『桜散る』
4/17/2023, 11:30:35 PM