いす

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要らないと言う。何もかも。そうかとうつむこうとすればふと振り返って同じ口で要るのだと言う。あなたが。来世で会いましょう。あなたが私を必要としてくれるなら。私があなたを必要とするのなら。会いましょう。こぼれた別れは理由も不明なまま川に流れ、うそぶきながら海へと泳ぎ出る。俺は海など知らないので、そうかとやはり返すしかなく、それでもうつむきわずかに下ろした瞼の下で海を思い描いてみる。呪われてしんでくれ。愛にまみれて焼かれてくれ。荼毘に付された理由が自ら語り出すまで、俺の骨とともに海の底に沈めてくれ。

10/10/2023, 10:51:41 AM