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『待ってて』

---待ってて。絶対帰ってくるから。

 あれから何年、経ったでしょうか。一日千秋の思いで待ち焦がれる時期はとうに過ぎて、あなたのいない日常にもすっかり慣れてしまった。果たしてあなたがあの約束を覚えているかもわからなくて、それでも諦念の中に僅かな期待を捨てられないでいる私を、人は愚かと笑うでしょうね。
 女の盛りはあなたの想い出と共に過ごしたの。俺にしないかって言ってくる男の人もいたわ。今はそんな人もすっかりいなくなって、それでも私はあなたを待っている。貴重な時期を棒に振って、と何度も言われたけれど、私は後悔していない。もしもあなたが帰ってきたら、私と結ばれざるを得ないでしょうね。そうしたら、一途な女の美談の完成だわ。ふふ。はあ。

 ……ほんと、馬鹿みたい。

2/14/2023, 6:12:31 AM