「あなたは悪くない」
その副音声として当てはまるのは、「だけどあなたのせい」辺りかな。口調は穏やかだし表情も悪くない。外面を保てるほど余裕はある、でも言わないとムシャクシャする。だから無難な言葉で嫌味としてぶつける。
この人はとても素直で真っ直ぐな人だ。感情的になることを恥だと考え、常に冷静であるかのように振る舞うのを徹底するくらいの完璧主義でもある。
悪い人ではない、悪い人ではないんだ。
でもいつも思う。この人は完璧なものを求めるあまり目の前のものなど何一つみえていないのだ。
心や感情なんて目には映らないが、言動から多少読み取れるはずなんだ。この人はそれを無意識かつ意図的に無視をする。
自分に都合のいい部分だけを掬っているだけ。
悲しみを悲しみと捉えているのにポジティブを投げつけ、嬉しさを共感しつつあら探しをするように情報をねだる。
悪いことではないが、あまり気分のいいものではない。相手に勘づかれさえしなければどうとでもなることだから。
そう、勘づかれさえしなければいいことなんだよ。
でもこれだけ長い時間を共にした自分には分かるんだ。全てではないけれど、分かってしまう。
思わず振りかぶりそうになる拳を握り込んで耐える。
こうやって力を込めておかないと取り返しのつかないことをしてしまいそうで恐ろしいのだ。
「そうだね、ありがとう」
この一言をどう受け止めているのだろうか。
【題:力を込めて】
10/8/2023, 8:27:43 AM