Namimamo

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さぁ冒険だ


海を前にして、そのあまりの大きさに呆然としたことはないだろうか。
私はある。エネルギーが押し寄せるような波の動きに飲まれ、どんなに目を凝らしても向こうが見えないスケール感に畏怖し、毎回呆然と立ちすくんでしまう。
そしてその度に、人間にとってはあまりに広大な海へと繰り出した、かつての冒険者たちに想いを馳せるのだ。

冒険者──それらはたとえば遣隋使だとかヴァスコダガマだとか、教科書に載っていたり偉人と呼ばれるような人物に限らない。

人類の歴史の記されるずっと前から、あそこに見える島へと渡ってみよう、その先にも何かがあるかを見てみよう、更にその果ての海の向こうへと、小さな船で漕ぎ出した市井の人々がたくさん、私が想像するよりもはるかにたくさんいるはずなのだ。

エンジンもない、地図も羅針盤もない時代の航海。きっと多くの船と人が海に沈んだのだろう。
それでもそのような人々がいたから繋がった歴史や文化がきっとある。


海を前に立つ。計り知れない質量に飲み込まれそうで私は呆然と立ちすくむ。
海は大き過ぎて怖い。
そんな臆病な私の耳に、波の音、海風の音に紛れてかつての冒険者たちの声が聞こえる気がした。
「さぁ冒険だ」と。

2/25/2025, 10:54:06 AM