作品67 空に溶ける
少し大きめな棒付きキャンディー。別名ペロペロキャンディ。そんな小さい頃からの憧れに、かぶりついた。
……ものすごく食べづらい。いくらもごもご口をうごかして頑張っても疲れるばかりで、食べられてる気が全くしない。
1度口から出して見ると、全然形が変わっていなかった。諦めて正しい食べ方を調べる。
なるほど。
どうやら袋の中で砕いてから、小さくなったそれを食べるのが正解らしい。ほうほうと独り言を言いながら飴を袋に戻し、ぐっと力を込める。硬すぎて全く割れない。何度か頑張ったが努力虚しく、諦めてハンマーで叩いた。瞬殺。
何だかやるせないな。なんて呟く。
飴が棒から取れたのを確認してから、割れた飴を近くにあった黒い皿に移した。
黒が砕けた飴が際立たせて、星に塗れた夜空みたいで綺麗だった。
一番大きい欠片をそっと取って光に透かしてみる。思ってたよりあまりキラキラしてなく、期待していたような輝きは見れなかった。何だか少し残念だ。そう思いながら口へと放り投げる。
酸味の強いところに当たったのか、さっきの味と少し変わっていた。口の中で回転させてみると甘さに全振りしたようなところに当たる。少し楽しいな。コロコロ転がしながら味わう。
夜空が、口の中でゆっくりと溶け出した。
5/20/2025, 12:54:07 PM