「私」がペンを持ち、作文用紙に向かってから1時間が経過した。
相も変わらず作文用紙は真っ白のままで、ペン先のインクは紙に触れる事もなく乾いていくばかり。
けれど、それでも……それでも物語を描かなければいけない。
だって、だって『私』は。文字を書き連ねなければ、作品が作られなければ、生きていけないのだから。
「私」が初めてショートショートを描き、ネット上にある小さな作品投稿サイトに投稿した時。『私』は生まれた。
流石に「私」という名でネットに作品を投稿する訳にも行かなかった「私」は、『私』という名で書いた作品を公開したのだ。
『私』の書いた作品は大人気とまでは行かないものの、少しずつ見てくれる方々やコメントを残してくださる方々が増えてきてくれて。
あぁ、書いて良かった。喜ばれて嬉しいな。なんて胸が暖かくなる。
けれど……ある時。「私」は書けなくなった。
なにか怪我をしたとか、そういう訳では無い。
ただ、なにも。なにも思いつかなくなってしまった。書こうと紙の前に向かったとしても、今現在みたいに何も書けなくなってしまうのだ。
無論。「私」が作品を生み出さなければ、『私』は何も発信できない。
何も発信できなければ、今見てくれている方はどんどん消えていってしまう。
そうなれば……『私』は、死んでしまうのだ。
どれだけ現実世界で「私」が生きていようが関係ない。『私』は、『私』という名のアカウントの心臓は止まったままなのだ。
だから酸素を、文字を、作品を、言葉を。
書かなければ。発信しなければ。
『私』はまだ、消えたくなんて……。
(お題 言葉にできない)
4/11/2026, 12:05:31 PM