てふてふ蝶々

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僕は部活の最中に熱中症で大きな病院に運ばれた。
こんなヤワなはずじゃないのに、今年の暑さは異常。
部活中、水分も塩分も定期的にとってたはずなのに、情け無い。
その日は、点滴とかしてもらって、すぐに帰れたんだけど、どうにも眩暈が治らない。
だから、もう一度受診して検査してもらう事になった。
部活は休みたくないけれど仕方ない。
病院の中庭には日除になるような木々もあって、入院着の人や車椅子の人が夏の暑い中散歩してる。
その中で一際目立つ女の子。
多分、幼稚園くらい?
小さな体でワンピースにサンダル。お見舞いかな?と思う姿だけど、1人で庭の草を触ったり走ったりしている。
親の姿も見当たらないし、何より不自然な程、大きな麦わら帽子。
子供のソレなら、縁がクルンと外巻きになってリボンがついているのが普通。
その子の被る麦わら帽子は、大人用?と思うほど、ツバが大きくて、女優が被っているような帽子。
頭でっかちに見える少女は、行動も背格好も幼児のようだけど、麦わら帽子だけ不自然。
明るい外を見過ぎたのか、くらりと目眩がする。
順番を指す電光掲示板を見たり、忙しく動く看護婦さんらしき人を見たりして、目を室内に慣らす。
そうしていると、玄関からあの女の子が入ってきた。
ちょうど通路側に座っていたから顔が見えた。
女の子の顔は傷だらけだった。
刃物で切られたような、焼けてただれたような。
知ってか知らずか外を満喫してきたらしい女の子の口角は上がっている。
かわいそう。
そう思った。
それは自分じゃなくて良かったていう酷く哀れんだ感情で、僕の嫌いな言葉。
打ち消したいのに、他の言葉が見当たらない。
僕は下を向いて、自分はなんて嫌なやつなんだって思った。
それと同時に、最近、近所で母親と同棲中の男から虐待されて保護された女の子がいるってニュースを思い出した。
あの子かもしれないし、あの子じゃないかもしれない。
僕の目眩はいつ治るんだろう?って不安で来た病院。
目眩なんて大した事ないと思った。
彼女は自分の顔をどう思っているのだろうか?
いつか僕と同じくらいの年になったとき、彼氏はできるのだろうか?
保護されて良かった。ニュースの子なら。
生きて、今日、笑う事ができたんだからと自分を納得させる。

8/11/2023, 11:17:40 AM