Mey

Open App

自死の記述あり 閲覧注意






私の母は私が20代前半のときに精神疾患を患い最期は自ら命を終わらせた。
私はその日のことをずっと忘れられない。

母の目が何か訴えているのに何も言われなかったことも、
私が車で仕事へ行くのを私の姿が見えなくなるまで見送ってくれたことも、
私が働く病院に救急車で運ばれたことも、
色濃く残った外傷も、
心停止している心電図も、
冷たい身体に死後の処置を施しながら、
(お母さんと私って、顔だけじゃなくて、身体のつくりもよく似てるんだ)と思ったことまで、
何もかも全部。

普段は意識的に思い出さないようにしている。
「お母さんの思い出は、宝箱に入れておくと良いよ。思い出したい思い出だけ引き出して、思い出せば良いんだよ」
そう言ってくれた人がいて、私はそれに救われたから。
だからいつもは、そっと、思い出を一部だけ大切に思い出すことにしている。

母が亡くなった晩秋から冬にかけての季節が、私は苦手だ。
平静を装うのが少し大変で、心から笑えない気がしている。
私の意思とは関係なく、宝箱が薄く開いてしまうのだ。

大好きだったお母さんに見つめ続けられて、
「どうしたの?」って一声かければ良かったとか、
職場へ着いてからでも携帯で連絡すれば良かったとか、
後悔が押し寄せる。


…苦しい。
宝箱を開けすぎてしまったのかも。
そっと開けて、そっと閉めておかなきゃね。

私は多分、死ぬまでそうやって生きていく。
宝箱を胸に抱えて、今もまだ辛い気持ちになることを誰にも悟られないように。
宝箱の話をしてくれた旦那にも言わないように、

そっと胸に抱えて。





そっと

1/14/2025, 12:04:53 PM