別れ際に
たぶん、もう会わない。今日の、いまのこの時間がふたりの最後の時間。前からずっとそんな気配がしていた。
まだ隣りにいるのに、もうポッカリと胸に穴が空いている。
彼女のほうから口を開いた。
じゃあ、ここで。
ああ。
……さよなら。
さよなら。
男らしく、礼儀正しく言ったつもりだ。でもそんなものは胸の穴には無意味のようだった。
さよなら、の前の、彼女のわずかな沈黙。
別れ際に彼女が残した、そのわずかな沈黙が、ずっと頭を離れない。
9/28/2024, 9:54:14 PM