初心者太郎

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—飼い犬の密告—

「ちょっと待ってタロウ!」

飼い犬のタロウが家の鍵を咥えてどこかへ持って行ってしまった。そしてすぐに何事もなかったかのように、戻って来た。

「タロウ鍵は?」

咥えていたはずの鍵がない。
タロウは尻尾を振り、可愛い目でこちらを見つめている。
急いで部屋を飛び出して、鍵を探す。
寝室に入った時、同棲している彼女が鍵を持っていた。

「あ……、それ」
「ねぇ、これどこの鍵?」

彼女の声と視線は冷たかった。

「実家の鍵だよ……」
「嘘だ。目を見れば分かる。浮気したんでしょ」
「……」

彼女は荷物をまとめ始めた。酷く憂鬱な時間が流れた。

「別れましょう。もう一緒にはいられない」
「……」
「さようなら」

彼女は部屋を出て行った。
膝から崩れ落ちて項垂れた。

タロウは彼女が落とした鍵を咥えて、僕の足元にそっと置いた。

お題:君が隠した鍵

11/25/2025, 7:29:29 AM