yukopi

Open App


私らにも夜はある。
血が騒ぐのだ。それは目につく限りの小動物に対して過敏に反応してしまう。それらは、私らの習性なのだからしょうがあるまい。


日中は寝る。
お腹が空いたら起きるし、また寝る。
たまには大きいのに愛を見せつけてフフンとする。
ほぼほぼそういう感覚で、生きている。


そして平凡な今日も、私らの夜がやってくる。
陽が落ちれば月が見える。あたりまえのことだ。
大きいのは、寝る。
私は大きいのが横になれるくらいの、ふかふかで温いものに包まれて寝ているのを知っている。
あれは実にいい。
日中は私のものだ。大好きな匂いもついているので「サイコウ」である。これは大きいのから教えてもらった、コトバというものだ。大きいのは、よく私に話しかけてくれる。そういう時、私はじっ、と大きいのの目を見つめるのだ。私なりの返し方である。


大きいのが眠りについた頃、私は外に出る。
いつもの習慣だ。
そして大きいのが起きる数時間前に、大きいのの寝ている温もりの中に"ちょっとしたキモチ"とやらを置いて行く。「キモチ」これも大きいのから得たコトバというやつだ。そしてこれも日頃の私なりの返し方である。




大きいのが、音高く何かを言っているのはわかった。
大きいのが音高くする時は、「カンジョウ」と言うものを昂らせているということらしい。これは三軒隣の三毛から聞いた情報である。
世の中に、大きいのは沢山いて1匹の時もあれば、集団で生活しているものもいる。ただ大きさが違うだけで、私らとなんら変わらない。私らは単独であり、集団も伴う。今一緒にいる大きいのは単独だが、集団になった時、同じ行動を伴うのが主流らしい。


確かに大きいのは、キンキンとした音を張り上げてよく私の頭を撫でてくれる。だから三軒隣の三毛から聞いたことは確かであるに違いない。


だから今日も、いや前からずっと大きいのが音高くカンジョウというものを昂らせているのを目にしていた。
そういう時、私らは基本的に何もしない。
じっ、と大きいのの行動を注意深く見ている。

そして、音高く発しながら私の頭を撫でてくれたと思ったら、それを手放した。
そして私はそれをじっ、と見ていた。

大きいのはそれを黒い穴の中に落とす。
私のちょっとしたキモチ…を。生きている時はウネウネと動いていたが、今は幼子も同然。私にかかれば。
穴の中に落ちて見えなくなった。
きっとこうやって私のちょっとしたキモチを集めているのだろう。


じっ、と大きいのを横から見つめる。
大きいのは視線の端から、私に気づいたのであろう。
目を見て、小さく…ヒッ!と音を出した。
私はこの行為を以前からよくやっていた。
そうして少し震える手でいつも通りに私の頭を撫でる。

いつもより今日は特にカンジョウを昂らせている音を聞きながら、私は明日も大きいのが寝る温い中へ、"ちょっとしたキモチ"を入れようと尻尾を高く上げた。



お題:これまでずっと

7/13/2024, 1:40:36 AM