これはまだ先の話。そう、未来の話だ。
白く光り輝く刻印『勇者の証』を受け取った俺は、王様と国民たちに見送られながら、はじめて足を踏み入れた王城をその日のうちに出ていくことになる。
旅の途中、資金が尽き行き倒れていた魔術師ユーナを拾い。
聖騎士の称号を剥奪された元騎士団長ハロルと意気投合し。
巨大な鳥に乗って俺らの荷物を奪い、追い回され、結局捕らえられた盗賊団の一人娘ヤンと『ちょっと嫌味な約束』を交わし。
一年半もの時間をかけ、魔王城へと攻め込み……そして負ける。
俺以外の仲間全員が息を引き取った後の世界については、多くの説明を省くが。
端的に言えば、惨たらしい世界となる。
それはまだ先の話。そう、未来の話だ。
では、なぜ今俺がそんな話をしたのか。
それは――阿鼻叫喚の世界が、いつの間にか。
一年半以上前に訪れ旅立った王城の中だったからだ。
呆然としてしまった。
これは一体なんだ、夢か?
それとも……時が、巻き戻ったのか?
「此度の勇者は『そなた』だ」
王様は言った。俺よりも小柄で、一見華奢そうな見た目をした、すべてにまだ幼さがある少女に。
「名は?」
王様の問いに少女は答えた。
「ヤン! ヤンです!」
やっぱりヤンだ。
ヤンが、勇者に選ばれた。
そのことを理解した瞬間、俺は彼女の元へ足早に駆け寄る。
それから俺は、ヤンに言った。
「お前に勇者は務まらねえ! よこせ!」
記憶の中にある、ヤンが俺に向けてはじめて口にした言葉をそのまま使った。
ヤンと交わした『全部終わったら、勇者以外の全員は生きて故郷に帰る』、その約束を果たすために。
【 遠い約束 】
4/9/2025, 3:51:42 AM