くっか

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ぱっと目を覚ます
暗闇の中、蝋燭を持っていた
蝋は長かった

向かい風が吹いた
火を消すまいと
風を背中で受けた
火はゆらゆらとしたが
消えはしなかった

雨が降ってきた
雨あしはどんどんと増した
蝋燭を地面に置き
体を屋根にして
火を守った

火はゆっくりと燃え
蝋は半分ほどになった

向かいから見知らぬ人が歩いてきた
蝋はあるのに火は消えていた
目に光はなかった
「火はどうされたんですか」
「或る人に吹き消されたんです
 もうどうなるか分かっています」

憐れに思った
「よければ私の火を分けましょうか」
「良いのですか」
「減るものでもないですしね」

火は燃え移り
小さいながらも蘇った
「アジャラカモクレン、ナンタラカンタラパってね」
「フフ、何ですかいそれ」
その人の目に光が宿った
「ほんとうにありがとう」
そしてまた別れた

雨を凌ぎ 風を凌ぎ
火を分けて 火を貰って
長かった蝋は随分短くなった
火はもう少しで消えそうだった
フードを深く被った人が近づいて来る

「火が消えそうですね」
「ええ、消えそうです」

「あなたが火を分けたように
 誰かから蝋を分けてもらえばよいのでは」
「火は減りませんが、蝋は分ければ減ります
 そこまでしようとは思いません」

「ああ、消える…」
「ああ、消えるね」
笑みを浮かべ
すっと目を閉じる
火は燃え尽きた。

〜命が燃え尽きるまで〜

9/14/2024, 10:24:26 AM