水まんじゅう

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目がぐるぐる回る。ここは何処だろう。行先がわからない。頭がふらふらする。すると一筋の光がさす
もう一人の自分になりたいでしょ と囁く。
恐る恐る光のする場所へ足を向かわせる。
そこは舞台上で拍手と喝采、劇場みたいだ。 
パーティ帽子にステッキを持ったまだ幼なげな少女が映し出された。
操り人形が規則正しく一寸もずれもなく踊る。
ステップを刻みながら踊る。
一瞬、目があった。”彼女”は微笑を浮かべる。
『君も踊るかい?踊れば日頃の苦難や圧力だって全てを忘れ去ることができる。さぁ僕と踊ろうよ。』
後ずさるが、ずいっと僕に近寄る。
『…残念ながら僕はそのために来たんじゃないよ。
 ここが何処か教えて欲しいんだ。そう、ここにくる前
 何があったんだ…うっすらだけど記憶が…』
それから先は思い出すことができない。無理に思い出そうとするとこめかみ辺りが痛くなる。
『なら良いんじゃない〜♬それを機に君は新たな道標、今まで無かった世界を君の目で見て君は君自身を作り上げることができる。絶好の機会だよ〜^_^
ところで君お名前は?』
名前、?そうだ。名前なら覚えている忘れる筈ない。
『雨…ん?えっと…』
『じゃあ君もお仲間だね〜!僕は”ルイス” この劇場の役者だ。ようこそ!welcome to the Alice land!
さぁ、手を取りたまえ。』

なるほど。ここが別世界(パラレルワールド)か。
ここでなら苦痛も苦難も感じない健やかななる場所
まるでゲームのキャラになりチュートリアルをやらされてるようだ。それなら今ここで弱虫な僕は、僕じゃない。
『よろしく。ルイスさん。新たな演目にぜひ僕を加えてください。精一杯もてなします。』
飄々と自信満々な態度で演出する。
ニターッと悪い顔を浮かべる彼女に一瞬背中辺りがひんやりとした。
『ああ…寒い』


9/25/2025, 5:06:49 PM