この道の先に
学校帰り。
いつもの帰り道だけど俺の隣には、今日転校してきた彼がいて。
同じ方向だから、何となく一緒に帰る流れになったのだった。
「授業の進み具合とか、前の学校と違うかったりする?」
「ううん、そこまで違わないから助かったよ」
「そっか。移動教室の場所とかは?ちゃんと覚えられた?」
「それはちょっと自信ないかな。一人じゃ迷いそう」
「じゃあ、明日から移動する時、一緒に行こうか?」
「ほんとに?ありがとう、助かるよ」
なんて。
お互いに探り探りの会話が擽ったいけど。
不思議と嫌じゃないというか……寧ろ、何だか心地良いというか。
まぁ、そんな風に思ってるのは、僕だけかもしれないんだけど。
でも、今日初めて彼と会って、自分でもよくわからないけど。
彼と話してみたいって思っていたから。
だから、この時間がもう少しだけ長く続けば良いのに。
なんて、俺が思っていたら。
「あ、俺の家、この道の先を曲がった所なんだ」
「そっか。じゃあ、ここでバイバイだね」
「うん、また明日。一緒に帰れて楽しかったよ、ありがとう」
そんな彼の何気無い一言が、嬉しいから。
僕もだよ、と言いかけて。
でも、このまま別れるのは名残惜しくて。
「あ、明日からも一緒に帰らない?」
なんて、声が少し裏返ってしまったのが、恥ずかしいけれど。
……なんとか、言えた。
たったそれだけの一言に、緊張して。
まだ、心臓がドキドキしてる。
そんな俺とは、正反対に。
君はあっさりと。
「良いよ」
そうOKしてくれて。
「あ、ありがとう」
じゃあ、また明日、と。
俺が舞い上がって、手を振って帰ろうとした時だ。
待って、と君に呼び止められて。
「ちょっとだけ、俺の家寄ってかない?」
今日暑いし、お茶でも出すよ。
なんて、さっきまでの何でもなさそうな様子とは違って。
彼はちょっとだけ、頬を赤く染めて。
俺を見つめる目が緊張しているように見えたから。
……あぁ、もしかして、君も僕と仲良くなりたいって思ってくれてるのかな。
だとしたら、嬉しいな。
そう思うと、自然と笑顔になって。
俺は君の言葉に頷いた。
End
7/3/2024, 11:34:02 PM