いしか

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暗がりの中で、私は綺麗な提灯を手に、神社の中を進んでいる。

これは神社と私の居る会社とのコラボ事業の一つで、無事に進んでいってるから、休憩ついでに体験してきて、と言われ、私は今実際に自分達で企画したイベントを体験している最中なのだ。

今回コラボさせて貰った神社は、パワースポットとして人気を博している神社だ。コラボ内容はいたってシンプル。
参道から進み、少しある森に入って神社に置いてある札を持ち帰り、その番号によって貰えるものが違うというもの。

もちろん、商品は私の居る会社の商品である。




「あれっ?私、迷った……?」
ちゃんと進んでいた筈なのに、一向に神社に辿り着かない。幸いスマホの電波は繋がっているものの、何で私はこうなってるの?

「ちゃんと進んできたのに……。
私って、方向音痴なの……?」

これまで道に迷った事は無かったのに、私は今迷子になっているかもしれない。
パニックになってもいいのに、私はまったく怖くないし、パニックにもなってない。

それも不思議な話…。

その時。


『こんなところで何している』

いきなり声をかけられ私はびっくり。

「えっ?!あ、あの……」

『こんな所で迷ってないで早く神社の道へ戻るんだ。』

私に声をかけてきたのは、二十歳くらいの青年で、とても綺麗な顔をしていた。
この子は……誰?

『さあ、早く……』

そう言われると、私の手を彼は優しく掴み、神社の近くへと連れて行ってくれた。

『さあ、速く戻るんだ。ここは貴方が居ていい場所ではない。』

「あ、あの……」

『幸せに、人の子よ』

「えっ……?」

そう言うと青年はいつの間にか消えていた。
私は無事に神社辿り着いたわけだが、どうやら私は長い間帰ってこなかったらしく、会社の人達にとても心配されていた。

私には全然そんな実感がなかったので驚いたが、私はやっぱり道に迷っていたらしい。


けれど、そんな私を優しくここに連れてきてくれたあの青年は、一体誰だったのだろう。
もしかしたら、この世の人では無かったのかもしれない。

けれど、青年が最後に言ったあの言葉、
『幸せに、人の子よ』

あの青年は、もしかしたらこの神社の神様だったのかもしれない。

私は霊感とかそう言うものは全くないのだが、私は不思議な体験をしてしまった。

けれど、何だか嬉しく思う、体験だった。

10/28/2023, 8:54:44 PM