真愛つむり

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「え、結婚式……ですか?」

国語のワークを解き終えて休憩の体勢に入った私に、先生が意外な話題を振ってきた。

「そう。半年後にやるんだけど」

先生は驚く私の顔に目もくれず、丸つけを始めた。

私の心はどす黒いモヤで埋め尽くされた。先生が、結婚する。私じゃない、他の人と。

いや、わかっていたはずじゃないか。私と先生では歳が違いすぎる。

私が大人になるまで、先生は待ってくれないだろうことくらい。

わかっていた。

最初から決まってたのだ。

「それで、どうする?君も来ますか」

残酷なことを聞く。私から先生を奪っていく人の幸せを願えと言うのか。

「えっ、と……私は」

私が煮え切らない返事をしたからか、先生は添削の手を止めてこちらを見た。

「おや、君なら興味津々でついてくるかと思ってました」

「そ、そうですか?」

「フフフ、君は積極性の塊だから。まぁでも、興味わかなくて当然か。知らない人の結婚式なんてね」

え?

「……知らない人??」

「ええ、大学の友人の〇〇くんと△△さん。知らないでしょう?」

その時、私の心に一筋の光が射し込んだ。

「話したことなかったよね?」

固まった私を不思議そうに見つめる先生は、今日も美しい。

「はい……ないです。知らない人です!!!」

「ど、どうしました!?急に大声出して」

「いえ、何でもありません♪」

私は勢い良く机に向き直り、意気揚々と、いちばん苦手な算数のワークを開いた。

今ならどんな難問だって解ける気がする。

つり上がった口角が天井にまで届きそうなのを抑えようと、私は鉛筆を強く握った。


そんな「私」を見て、「先生」はそっと微笑んだ。


テーマ「最初から決まってた」

8/7/2024, 8:29:39 PM