龍那

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[神様へ]
 
 飴玉が。ノートが。5円玉が。貸した本が。バラバラと降り注ぐ。
 僕は神様へ手を伸ばしたけど、彼はにっこりと微笑んで、瞬きひとつでその手を弾いた。
 なんで、も声にならない。涙も出ない。
「もう、君は要らないんだ。私は何も受け取らないし、受け取った物は返すよ」
 それだけ言って、彼は僕の前から姿を消した。

 僕が神様へ捧げられるものは、全て無かったことにされた。
 捧げたものも、全て無かったことにされた。

 でも、彼へ捧げた心だけが返ってきてないと気付いたのは。
 荷物を抱えてとぼとぼ帰る、月明かりに照らされた夜道の中だった。

4/14/2023, 1:57:30 PM