ただの社畜

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戦争中激しく鳴り響く不快な音たちにおれは小さく息をついた。
久しぶりの前線。それも最前線。またまたどうして。いつもは監視塔及び司令室に引きこもり戦争中でさえ滅多にそこから出ないのに。そんなおれがどうしてこんな場所にいるのだろう。
そんなわかりきったどうでもよいことをぼぅっと考えていると、その隙を狙って敵国の兵士が何名か束になりこちらへ向かってきた。
なぜ、なぜか。それはおれが自ら希望したからだろう?
この戦場に自軍の幹部はおれしかいない。さらに、一般兵ですらごく僅かだ。対して敵軍はもともと数の暴力でゴリ押すことで有名な国だ。
あぁ。あぁかわいそう。戦う意志さえないただの市民が。戦う理由すら知れないただの国民が。自分の未来すら選べない哀れな軍人が。とてもとても。
「かわいそう」
ぼそっと呟くと、その思考を消し去るように自ら箍を外した。
「あは。あはは。あはあはあはあは。かわいそう。かわいそう。かわいそう…だからおれが殺してあげるね」
お前らのその目が。その目が嫌いだ。なにもかも諦めて、でも指示には従うしかなくて。自害なんてできなくて。だから早く殺して欲しくって。でも死ぬのは怖くって。ありえる筈もないもしかしたらにどうしようもなく。みっともなく縋り付いて。そんな自分が大嫌いで。醜くて。
昔のおれを思い出すから嫌いだ。あの国も。お前らも。弱すぎたおれを。何も出来ないくせに成功体になり続けたおれを。この国に出会ってから思い出すたびに何度も。何度も、殺してきた。押し込んできたおれを。なんの気もなく引きずりだしてくるんだ。
初めてこの国を見たあの日から。絶対にぶっ潰すって決めてたんや。おれが。この手で。
こんなことで昔が消える訳やない。そもそもここはおれを壊した国やない。でも。それでも。
「んふ。んふふ。あは。あはあはあは。
死は救済や。お前らだってそうやろ?今日はまだ聖なる日やないけど、おれが最高のプレゼントをくれてやるよ。あは。あはははは。楽しいな。たのしいなぁ!!もっとおまえらもたのしもうや!!!」
前線は久しぶりや。でも人を殺すのは毎日やってる。
大丈夫。ちゃんと、

「一瞬で終わらせたる」

お題「プレゼント」
桃視点

12/23/2023, 11:01:57 AM