貝殻

Open App

「夏の気配」

朝、目が覚めると、ふっ、と夏の気配がした。
それだけ、ただそれだけのことに、安堵した。
蝉は鳴いていないし、室内だから太陽がひどく眩しいわけでもない。
それでも、なぜかふわりとだけ漂う夏の気配。
少し経てば、散り散りになってなくなってしまいそうな、脆いそれを感じて、短く息を吐く。
地元の会社に入って、3年目のある休日。
久しぶりに、夏をじわりと感じとれた。
確か、自分はこの空気が好きだったな、といつの日かの記憶を思い返す。
懐かしい。そうだ、ひどく懐かしい。
安堵した理由は、きっとそれ。
夏は、まだ己の知るものそのままだ。

6/28/2025, 11:56:06 AM