「春の暖かい陽の光にだけ照らされてきたような、そんなひと きっと誰にだって勿体無いわ」
もちろん、私にだって。君は僕に背を向け、キャンドルに火を灯しながらそう言った。
「まあ僕としては、君が叶わない相手を想い続けてるおかげでこんな時間を過ごせているって思うと、感謝をしなくてはいけないかな。」
まあ、そろそろ僕に振り向いてくれたっていいけれどね。 聞こえる程度に声を抑えてもらした本音に返事はなかった。
代わりに、君はくるっと振り返り、立て続けに言葉を発した。
「ねえ、あのひとの見る夢は、きっと世界で一番色鮮やかで美しいんでしょうね」
「あのひとの目を通して見たら、きっとこんな世界だって素晴らしいものに映るはずよ」
「明けない夜なんてないって、泣いている私にあの人は言ってくれたの。だから、きっと、もうすぐ朝が来るんだわ!それを私、待っているの。」
君はそれだけ言って、ベッドに潜り込み そのままころっと寝てしまった。
「明けない夜がきたっていいと、僕は思うよ。」
ふぅっとキャンドルの火を消して、僕もベッドに横になった。
2/26/2024, 12:19:27 PM