ぱう

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ススキ

私が小学生の頃、家が近所で仲のいい幼馴染が居た。
その子は活発で、ちょっとアホで、でも誰よりも良い奴で。
彼と遊ぶ毎日はとても楽しくて、幼いながらに恋心を寄せていた。
けれど、小学四年生の夏休み。
家族と行った旅行先で、私はトラックに跳ねられ重傷を負った。
当たりどころが悪かったとかで、私を跳ねたトラックの運転手はそのまま逃げたそうだ。
私は長いこと意識が戻らなかったらしく、目を覚したのは事故から約二週間後のことだった。
私が目を覚した時、病室には誰もいなくて。
だから、一番最初に目に入ったのはベッド横にある棚の上。
私の大好きなフルーツや綺麗な花、学校の友達からの手紙などが置いてあった。
どれも心が温まるものばかり、でもそれらよりも私の気を引いたのは大きなススキだった。
「というか、普通はお花を持ってくるでしょ。」
びっくりはしたが、自然と元気になれた。
その後、看護師さんが私の目が覚めた事を知り、三十分もしないうちに家族が駆けつけた。
家族みんな私の無事を喜んだ。
事が落ち着いた時に聞いてみたのだが、ススキをくれたのはどうやら家族ではなく、近所に住む幼馴染らしい。
でも、私はどうしても彼のことを思い出す事ができなかった。
家族に彼のことを聞いても、顔をしかめ、合わせるばかり。
けれど、当時の私にソレを察する事はできなかった。

11/11/2024, 4:42:48 AM