寝ているあの人を置いて部屋を出ようとしたとき、かすかに聞こえた「まって」をなかったことにした。たぶんそのうちにあの人の過去から、記憶から、僕は消えてなかったことになる。あの人の頭の中や心から僕というすべてが抹消される瞬間に、ふと「まって」と言ってみても、きっとあの人は知らんふりをするんだろうなあ。でもいいよ、それで。そしたらぜんぶ恨みっ子なしのお相子ね。
5/18/2025, 10:39:15 AM