私は猫と会話する。
今日は仕事場に連れてきてしまった。
いつもなら連れて行かない。それが日常だ。
だが、いつもながらにいつもじゃない事だってある。
課長に訳を説明して、許可を得た。
猫はまだ子猫で、フワフワの毛がチャーミング。
朝起きると同時に左腕に巻き付いて離れなかった。
遅刻するのも嫌だったからそのまま出勤した。
電車の中で写メを撮られそうになったけど、申し訳ないないがせめて苦しくないようにショッピングバッグの中に左腕を入れて、ふわ猫の権利を護ったりした。猫だって勝手に撮られたらそりゃムカつくでしょうが。幸い、ニャーと文句を垂れなくてホッとした。
だが、会社に来てからが本番だった。
電車の中では落ち着かない様子だったが、私が椅子に座って動かないことに落ち着いたのか机の上をウロウロし、「こら、静かにしなさい」というと『にゃー!』とか『ニー!』とか文句を言うようになった。
その度に、
「いい?此処は私の職場なの。いい加減、自覚というものを…」
『ニャー!』
「にゃー、じゃない!ちょっと聞きなさい。」
猫と会話している私たちを側から見ていて、微笑ましい周りの人たちの視線を感じながら私は黙々と今日のタスクをこなしている。
私は出来る女。
周りの人たちもそんなに見てはいられないから、PCと向かい合ってる。けど、顔から笑みが溢れている。
でも私は……、これでも結構必死だった。
『にゃあぁぁぁぁ!!』
突如として唸る可愛い叫び。
なんか不満げなご様子で子猫が言ってくる。
「…寂しんぼか?」ごじょせんのセリフを返す私。
隣で同僚が吹いている。ブフッ
「帰ったら爪切ろうね」私がいうと
『ニャー!』嫌だと言ってきた。
爪切りが嫌いだ。
「怪我するから(今、私がしてるんよ。痛い!)」
『にゃあああ』
「にゃあああじゃない。」
『ンー』
「ダメ」
『ゴロゴロ』
「ゴロゴロしたってダメ」
出来る女である私は仕事中だろうが意識せず猫と会話し、やりとりは途切れることはない。私にとっては日常そのものなのだから。しかし環境に慣れていない同僚たちは、たまらずコーヒーを吹き出していた。
「可愛いがすぎる」「笑いが止まらん」
後で聞いた話、…課長も笑っていたらしい。
お題:私の当たり前
7/10/2024, 1:59:50 AM