元さん

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思念体じゃない、それは言う。娘など愛していないと。娘は泣き、古い記憶を思い出す。どれだけ厳しくても自分を見捨てない、妖艶なる母の姿を。今の醜い老婆と重ねると、また涙が止まらなくなる。妹はといえばまだ期待をしていた。母では無く、弟に。思念体に取り込まれ、半人となった血の繋がらない彼を思い続けている。そうでもしないと生きてる理由が見つからないらしい。
なぜ僕はこれを黙って見てるのか僕にも分からなかった。魔法使い少女の内側に隠れていた仲間の姉を、助ける義理がないわけではない。しわの寄った老婆が怖くて動けないわけでもない。ただ何も、何もできないのだ。
イデアは今何に乗っ取られているのか。管理者が腹の中にいる今、そこに秩序なんてあるのか。彼女は1人の女の子になれるんだろうか。雷竜は彼女の何に魅せられたんだろうか。どうして何も言わないのだろうか。
分からない。僕は部外者だった。彼女の愛を受け取るのは僕じゃなかったし、体と記憶を共有できるほどに共依存な姉も居なかった。ずっと1人だった。

7/14/2024, 4:11:50 AM