帰路。
寒いね、冬が来るの早すぎるよねと世間話をしながら、歩くこと1分ほど。
「キンモクセイの香りがするよ。」
友人が呟きました。水を混ぜた墨のような空の下、灯りが道をくっきりと映し出す夜にです。当然のように冷える風が、体温を奪っていきます。
ぶるりと体を震わせながら、墨の夜に流れる芳しい香りを、くんくんと捉えようとしました。
すると成程確かに、微風に乗り、あの香りが鼻腔をくすぐって行きました。
「秋が無い」と嘆いた我々には、見識が足りなかったのかもしれません。
恋しきあの季節は、ずっと隣で確かに存在しているのでした。
[キンモクセイ]
11/5/2025, 9:25:36 AM