しそひ

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貝殻
「博士、これは……」
「ああ、束彩。貝殻の化石を拾ったのか」
「はい。ところで貝殻とはなんですか」
「貝殻はかつて海で採取できたものだ。それは無機物のようだが、食べられるものもあるんだぞ」
「ホタテとかですか」
「そうだな。現在は海自体が枯れてしまったから、食卓に並べるものはどうしても限りなく似せたものになってしまうんだ。申し訳ない」
「別に……博士が謝ることじゃないですよ。海がないのは地球温暖化を進めた人間ですし……全く理解ができない……わたしにとったらあなた達が毒のようなものですよ……ブツブツ」
「そう悪く言わないであげてくれ。束彩も元々は人なのだから、」
「博士。現在のわたしはクローンです。……昔の話をされても、どうとも思えません」
「そうだな。ごめん」
「…………あの」
「ん?」
「博士、可能であればなんですが」
「どうしたんだ?」
「博士は、わたし達に海をもう一度見せてくれますか」
「……それは、かなり不可能に近いな。でも、どうして?」
「綺麗だなって思えたんです。これは毒もない。わたしが綺麗だと思えたものは全て毒が含まれていました」
「束彩は……海が見たいんだな」
「そうです。化石の状態でこんなにも綺麗なら、海本来はとても美しいに違いない。そう思いませんか」
「なるほどな。わたしも地球温暖化により消滅したものを復元しようとしているところではある。……その望み、覚えておくよ」
「どうも。楽しみにしています」


〜〜〜


おまけ
空模様(8/19のお題)
本日書いたものとは世界観が異なります。
「……」
「詠人さん?」
「ん?ああ、玲央か」
「お悩みですか?私ができることならなんでもやらせていただきます」
「いや、違うんだ」
「?」
「空は元々いた世界と同じだな、って感じていた」
「元々……?」
「俺様は本当はここの世界の住民ではないんだ。信じてはもらえないだろうが」
「いいえ、信じますよ」
「……お人好しだな」
「いいえ、根拠からの推測です」
「どういうことだ?」
「現在、どこからともなく現れてここで生活している、仲原みさとさんが証人のようなものです」
「……なるほどな。彼女にも元々の世界があるような発言だからな」
「なにより……」
「ん?」
「……いえ。空、本当に綺麗ですよね」
「……?ああ……そうだな……?」

9/5/2023, 12:32:33 PM