──耳を澄ますと聞こえてきたのは、両親の声。
熱に浮かれていた私の背後はテレビの光で照らされている。両親がなんて言っているか分からないけれど、なぜかとても心地よかった。
ふと、母が私のおでこを触る。前髪をなんどもさわる。くすぐったくて笑いそうになったけれど、起きてるなんてばれたくないから狸寝入りをする。
さわさわ、さわさわ。
少し、肩が震えたが、すぐに背中をひとなでしたははが毛布をかけ直してくれる。
とても、とても暖かくて大好きな時間。両親の声が段々と遠のいていく。まだ、寝たくなかった――だけど、既にその日々は過去に過ぎない。
──静かなベッドで目を覚ます私。聞こえてくるのはテレビの騒々しい音と、外から聞こえてくる鳥の音。乾いた冷やしタオルを無造作に退かす。
枕元に置いていたスマホの電源をつける。
【熱は下がりましたか? 母】
返事を打とうとした指をはたと止める。それから少しだけ耳を済ませてみた。
画面の向こうから、あの日と同じ声が聞こえた気がした。
5/4/2026, 12:43:05 PM