喜村

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 満点の星空の中、俺は田舎道を徘徊していた。
五月下旬、寒くも暑くもないこの気候、夜の散歩にはうってつけだ。
強いていえば、田舎すぎる故の、蛙の大合唱が少々鬱陶しいくらいだが、まぁ、それも風情と捉えておこう。
 スマホはいじらず、目的地もなく、ただなんとなくの夜の散歩。
 たまに夜空を見上げると、小さな星々が瞬いている。
街灯は少なく、街灯よりも自販機の方が多くて明るい。
 小さい星も霞んで見えるのは、大きな月の周り。
星に願いをと人はいうけど、こっちの方が願い叶いそうじゃね?、と俺は思う。
 流れ星を探すより、こっちのエネルギッシュの月に願いをしようか。
女の人は月からパワーを奪われるというけど、俺は足を止める。

「明日のアルバイトの面接、合格しますように」

 さて、そろそろ帰るか。
 俺はまた歩を進めた。
蛙はまだゲコゲコと大合唱をして、俺を見送ってくれた。


【月に願いを】

5/26/2023, 10:18:48 AM