「お月さま、今日もきれいですねー」
彼女がソファから窓の隙間を覗き見上げていたのはまん丸お月さま、じゃなくて真っ二つにされた半分の月。
俺は恋人に手を差し伸べてソファから窓に誘う。彼女は俺の手を取って寄り添いふたりて月を見上げていた。
「そう言えば、この前は皆既月食もあったよ」
「え、見たんですか!?」
「うん。夜勤の日だったから、みんなで見た」
「えー、私も見たかったぁ!」
ぷうと頬をふくらませて抗議の視線を送ってよこす。俺は膨らんだ彼女の頬を人差し指で押すと、ふぅと息を吐く。
「いや、深夜だから絶対寝てたよー」
「そうなんですか?」
「そうだよ」
俺は彼女を後ろから抱き締めると、彼女も俺に体重を預けてくれた。
「じゃあ」
「ん?」
彼女の手が俺の手の上に重なる。
「今のお月さまを一緒に見ましょう」
おわり
四八六、君と見上げる月……
9/14/2025, 2:31:58 PM