ストック

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Theme:眠れないほど

明日はいよいよあの方の誕生日だ。
生まれてこの方調理用のナイフすら握ったこともなかったが、どうしても彼が喜ぶ顔が見たくて、この1ヶ月間、ずっと彼の好きな果物がたくさん入ったケーキを作る練習をしてきた。

最初は果物の皮を剥くのも苦労した。
細かい切り傷がたくさんできてしまった私の手を見て、あの方に心配をかけてしまうことも多々あった。
剣は自分の腕を振るように自在に操れるのに、果物にこんなに苦労させられるとは思わなかった。

それでも練習すれば成果は出るもので、あの方の誕生日を明日に控えた今は林檎でも檸檬でも何でも上手く切れるようになった。
あの方は「いつの間にそんな器用になったんだ?」と不思議がっていた。

幼い頃から仕えていたあの方が、先王の崩御により若くして新たな王となった。
隣国との戦は勿論、若い彼を傀儡にしようとする者や暗殺しようとする者もおり、味方にも安心して頼ることはできない。
それでも、あの方は弱音も吐かずに凛として王の責務を果たしている。

だが、明日は彼の誕生日だ。明日くらいは年相応に誕生日を喜んでほしい。
そのために彼の大好きなケーキを作ることにした。
また、昔のような無邪気な笑顔を見せてくださるのだろうか?
想像すると年甲斐もなく、眠れないほどワクワクしてしまう。

12/5/2023, 1:34:53 PM