もうすぐ日付の変わる時間に、わたしは目の前に差し出された手のひらにためらいなく自らの手を重ねた。
門限以降は一歩も外に出てはいけないという言いつけを、この日はじめて破った。
誰も外を歩いていないと思っていたけれど、そんなことはないのね。
夜も、耳を澄ますといろんな音が響いているのね。優しくも、どこか寂しくも聞こえる不思議な音の数々。
初めて入ったこのお店、この時間でも開いていただけじゃなく、見たことのない品物がたくさんあって、驚いたけれど、楽しい。
なにより、たくさんのことを知っているあなたが、気になって仕方ない。
もうすぐこの魔法は解ける。
無理を言って連れ出してもらった特別な夜も、終わりが来る。
――特別は、一度しかないから、特別なの。
わかっているから、少しでも長く、この魔法に浸らせて。
お題:特別な夜
1/21/2023, 4:16:46 PM