冷えたワインをグラスに注いでベランダに出る
もう昼の熱もない 極上の風が肌を撫でる
柵から見下ろせば小さく見える人の姿もまばら
遠くからクラクションの音が響く
街灯は道を柔らかく照らし
正面には大きな舞台のように広がる闇
遠く微かに揺れるのは漁船の灯だろうか
空と海の境はあいまいだけれど
月明かりが細い筋となって海を知らせる
耳を澄ます 寄せる波の音
浜辺の砂に沁みていく波
濃い潮のにおい
昼の喧騒から離れ 安らいでいるような海
わたしの心もとろりと和らいで
どっちつかずの思いが波に溶かされていく
「夜の海」
#195
8/15/2023, 10:46:01 AM