「秋なんて、もう来ない気がする」
「今年あちーもんな」
今年の夏は暑かった。そして長かった。いや長い。現在進行形。
君はうんざりとした顔で夜の空の下、ベランダから空を眺めた。
んなにあちーならエアコンの効いた室内にいればいいものを、この恋人は暑いのはそんなに嫌いではないことを俺は知っている。
「汗がね、嫌いなんよ」
「知ってる」
「暑いのはね、好き。こうやって外でぼんやりするのも」
「俺も」
互いにニヤッと笑って手を繋ぐ。ベランダはセメント作りだから外からは見えない。まぁここは高層マンションだから柵だとしても見えないけどな。
「あっちーよ」
君はニヤニヤと笑う。でも手を離す気配はなくて、俺の手をにぎにぎ。
「秋がーいつか来るまでさー、こうしてよっか」
「秋になったらやめんのか」
「やめるわけねーじゃん。その次は冬まで、その次は春までこのまんまよ。そしたら次は、もう、夏!」
なるほどね。
「あー早く秋が来ねぇかなぁー!」
君はそう言って、ケラケラ笑う。
どの季節も、きっと俺は君に恋をする。
▼秋恋
9/21/2023, 11:10:33 AM